ショート小説 ユリ
「約束の時がきたので行ってきます。」そう置き手紙を残して 母がいなくなったのが大学1年の春のこと。母のいない寂しさはあるものの祖父母が手助け、援助してくれたおかげで 無事変わらない大学生活を送れている。
kpop韓国ドラマにハマり大学の第二外国語は韓国語を専攻、ある程度会話ができるレベルまでになった。「ネイティブのようで貴方は発音が上手」と先生にも褒められるほどだ。ふと韓国ドラマを見ていた時に母が言った 「この人パパにそっくり」と呟いたのを思い出した。私の記憶に「パパ」はいない。母1人子1人で暮らしてきた。
そうだ。せっかくだし韓国に一人旅にでも行ってみようかなとふと思った。決まれば即行動の私は祖父母にそのことを伝えたところ、「韓国に恋人でも出来たのか。みなみ(母)だけでなくお前まで。」と猛反対された。いろんな経験をするように、いろんなことにチャレンジするように応援してくれる祖父母がなぜ韓国へ行くことにはそこまで反対するのか なぜいま お母さんの名前を出すのか分からないまま、私はバイトで貯めたお金で1週間韓国旅行へ向かった。
韓国に到着しテレビや雑誌に出ている街を目の前にしてウキウキしていた。
そのとき
「유리야 왜 혼자서 가〜(ユリーなんで1人で行くのー)」と声を同い年ぐらいの男の人にかけられた
振り返ると知らない人
「え?たしかにユリですけど あなたのこと知らないので 人違いですよ」
「何言ってるの??ユリ? 記憶喪失にでもなった?? (카톡카톡 電話の音)(もしもし? え?ユリ? え? あーわかったー そっちいくー)ごめん ほんとに人違いだったみたいだ いやーほんとそっくりだ。미안해요 ゴメンナサイ」
そう言って彼は嵐のように去っていった
韓国に私にそっくりな人がいるんだなー私 韓国顔なのかなー 。。。そんな呑気に考えていた。
日韓交流会が語学スクールで開催されているのを旅行前にネットで見つけて、せっかくなら韓国に住むお友達を作ろうと参加してみた。
びっくりすることに この前유리야と話しかけてきた男の人と私と顔が同じ女の人が目の前にいた
「あー 유리この子が前に言ってた ボクが유리と間違えたって言ってた子だよ ほんとそっくりでしょー」
「はじめまして。。。加藤ゆりです」
「はじめまして。。。김 유리(キム ユリ)です」
「あ、ボク 박 준수(パク ジュンス)デス」
容姿が似ているからか유리初めて会った気がしなかった。好きな食べ物など共通点がたくさんあった。だからか 直ぐに仲良くなり、韓国にいる間何度もご飯を一緒に食べ、時にはクラブに連れて行ってもらった。
「유리はなんで日本語を勉強してるの?」
ふとカフェでワッフルを食べている時に聞いてみた。
「本当のお母さんは日本人だって아빠が言っていたの。いつかお母さんに会った時にお話しできるように勉強してるの。」
유리は孤児院出身で独身の男の人に引き取られ 父一人子1人で育ってきて今は1人で暮らしいるとそこで初めて聞いた。
私たちは誕生日は7日違い、血液型も一緒。境遇が似ていた。
「유리언니(ゆりお姉ちゃん)って呼んでいいよ」
「えー 7日しか違わないじゃんㅋㅋ」
まさか韓国に旅行に行ってこんなにも気が合う友達ができるなんて そんな偶然のような運命もあるのかと思いながら 韓国から帰国した。
帰国後、祖父母からはとてつもなく 怒られたが、どことなく私の元気な姿をみて ホッとしているようだった。