ショート小説 ユリ 5

そう聞くと母と유리のお父さんがゆっくりと過去について話しはじめた。

母とパパは日本で出会い、付き合い始めた。結婚を意識しはじめた頃、両家両親からの反対により結婚して一緒に暮らすことを許してもらえず諦めるしかできなかった。

そんな中、妊娠に気づいた。お腹の中の赤ちゃんは双子で2人には堕ろすことを考えられなかった。結婚し一緒に暮らし、子どもを育てることは許されない。2人は解決策が見つからず、どうすることもできないと悲観しつつ、なんとか妊娠していることを隠し通し、韓国で最後の時を過ごしていた。

そんな中、予定より早く陣痛が来てしまい 유리を出産した。

2人目が出てくる気配がなく陣痛もおさまっため

無理にわたしを出産せずに退院することとなった。2人は 双子が同じ日に産まれず、陣痛がおさまったことを運命と感じ、1人ずつ子供をそれぞれお互いのことを思いつつ、愛情を込めて育てて、2人が18歳になった年の付き合った記念日に韓国の南山タワーで再会しようと誓った。そして母は日本に戻り シングルマザーとして私を出産し育てることを決めた。

パパは両親に유리が母の子だと言ったら유리をどこかに連れて行かれてしまうと考え、

孤児院から引き取ったと嘘をついて 유리を一人で育てた。そして、再会の日が来て母は韓国へ向かったらしい。

「おじいちゃんとおばあちゃんにもう一度反対されるのはつらくて ゆりにも言えず、突然いなくなってしまってごめんなさい」

母は涙ながらにそう言った。

なんて言っていいのか分からず固まっていると横から震える声がした。

「私は本当は 本当にパパの子供だったの?」

「そうだ、유리は本当はパパの子供だ。産まれる前からずっと。今まで嘘をついて 유리にママもパパもいない辛さを与えてしまって申し訳ない」

「謝らないで。わたしはパパに愛情をかけて育ててもらった。ママがいないことは寂しいこともあったけど、パパがいたからわたし辛くなかった」

「유리 会いたかったわ。ゴメンね 今までずっとパパと2人にさせて」

「언마 (お母さん)。。すごくすごく会いたかった。。。」

そう言って유리は2人に抱きついた。

유리は本当にお姉ちゃんで、この人が私のお父さん。あまりのことで私はただ猛然と3人を見つめることしかできなかった。

「ゆり。みなみと2人でこれまでありがとう。君からみなみを奪うような形になってしまってすまない」

「お母さんが元気で暮らしてくれてるなら私はそれでいいの。私ももう子どもじゃないし。おじいちゃんやおばあちゃんが援助してくれて大学にも問題なく通えているし。でもお母さんはこれからどうするつもりなの?」

「パパと韓国で結婚して、やっとビザがおりたの。このままパパと一緒に暮らしたいと思ってる」

「아빠この家は買ったの? 亡くなった할아버지(おじいちゃん)たちは 仁川に住んでるって言ってなかった?」

「ここは叔父さんからもらった家なんだ。パパとママのことを知った叔父さんが不憫に思って、将来一緒に過ごせる時が来たら ここに住むといいって」

 


こうして私の母を訪ねる旅は終わった。

 

 

 

 


日本で交際している時に赤ちゃん名づけ数ランキングのテレビを見ながら

「子供ができたら なんて名前にする?」

「女の子だったらユリ 男の子だったら、、、

   うーん 何がいいかなー」

そんな夢物語を2人は覚えており、私たちは2人ともユリと名付けられたのだ。これが ゆりと유리真相だった。